心のともしび
 
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「忖度」の文化論
   2017/6/12 (月) 18:53 by 北松拓也 No.20170612185336

 今年の通常国会では、学校の新設認可の行政手続きを巡って、その決定過程
において「忖度(そんたく)」があったのではないかとの疑問が野党側から投
げかけられ、議論が白熱しました。

『広辞苑』に書かれているように「他人の心中をおしはかること」が「忖度」
ですが、考えてみれば、そういう対人姿勢を尊ぶ文化が日本には古くからあり
ました。「禅」の教えを伝える方法である「以心伝心」も、「他人の心中をお
しはかること」がなければ成り立ちません。

 時代劇などでは、悪代官が自分の心中を察して利益になることをしてくれれ
ば、お返しに相手に得をさせて上げようとほのめかすときに用いる常套句とし
て「魚心あれば水心」という言い回しがあります。

 国会の議論で「忖度」という言葉によって問われたのは、行政手続関係者側
である「魚」が権力者側の「水」の心を推し量って便宜を図った事実があった
のかどうか、ということでした。

 いずれにしても、「忖度」という言葉はマスコミでずいぶん取り上げられ、
人々の耳目を集める大きな話題になりましたので、今年の「新語流行語大賞」
の候補に挙げられる可能性が十分にありそうです。
                               北松拓也


ジャーナリズムと波風の関係
   2017/6/11 (日) 23:53 by 北松拓也 No.20170611235301

 だいぶ以前の話ですが、2020年のオリンピック開催地を目指して東京が立候
補し、宣伝活動に励んでいた時期のことです。ドイツの有力紙「Frankfurter 
Algemeine Zeitung(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング)」の
ホームページに掲載されていたある論説が目に留まりました。そこには、「日
本が東日本大震災に見舞われたからといって、次のオリンピック開催地につい
ては、東京に同情票を入れるべきではない」といった内容の意見が書かれてい
ました。私はそれを見て、わざわざそんなことを言うとは、そもそも日本に対
してどういう考えや感情を持っているのかと、大いに違和感を覚えました。

 その後、どれくらいの月日が過ぎた頃だったか記憶が定かではありませんが、
NHKの語学番組「テレビでドイツ語」を見ていたとき、番組内のインタビューの
コーナーに上記の「Frankfurter Algemeine Zeitung」の東京支局長がゲストと
して出演しました。どんな話をするのかと興味を持って聞いていると、「われ
われジャーナリズムの仕事は、人々の間に混乱を巻き起こすことだと考えてい
ます」という発言がありました。私の頭の中では上記の論説の件が影を落とし
ていたので、「何ということか。社会の安寧を乱すのがジャーナリズムの仕事
だと考えているのだろうのか」と、疑問がますます深まり、割り切れない思い
が残りました。

 ところが、6月10日(土)の午後10時からEテレで放映された番組「SWITCHイ
ンタビュー 達人達」の中で、出演者の田原総一朗氏が「ジャーナリズムの仕事
は、波風を起こすことなんです。波風を起こさなければ、ジャーナリズムじゃ
ない」と強い口調で言い切ったのを聞いて、「なるほど」という気になりまし
た。その言葉には、30年あまりにわたって民放の番組「朝まで生テレビ」で迫
力ある司会を務め、多くの討論者からホンネを鋭く引き出してきた田原氏なら
ではの確信に満ちたものがあり、強烈な説得力を感じざるを得ませんでした。

 今にして思えば、あのドイツの新聞社の東京支局長が言ったことは、この田
原氏の見解とほぼ符合している点において、必ずしも間違いではなかったわけ
です。
                               北松拓也


NHKのEテレで「唯識」を学ぶ
   2017/6/11 (日) 19:24 by 北松拓也 No.20170611192408

 今年の4月からEテレで放映が始まった「こころの時代〜宗教・人生〜 シリ
ーズ 唯識に生きる」という番組があります。全6回シリーズで、毎月第3日曜
日の午前5時から6時まで放映され、再放送がその次の土曜日の午後1時から2時
までとなっています。番組のリポーターを小野文恵アナウンサーが務め、「唯
識」の教えに基づく呼吸法や瞑想(めいそう)などの実践を通して、その体験
の前と後の変化について語っています。

 仏教の根本にある「唯識(ゆいしき)」の思想は、「この世の存在はすべて
自分の心が作り出したもの」と捉えて、心のありようを深層意識から変える実
践を説いています。5月21日(日)に放映されたこのシリーズの第2回のテーマ
は「自分とは何者か」でした。

 この「自分とは何者か」という根源的な問いに結びついているのが、唯識思
想で説かれる「八識」の中の第七識にあたる「末那識(まなしき)」です。

「末那識」は、現代の言葉で言えば「自我意識」です。大勢の人前でスピーチ
や演奏などをするときに、心ならずも緊張してあがったり、恥ずかしくて顔が
赤くなったりするのは、「自我意識」のためです。このような「自我意識」は
「自我執着心」、つまり自分というものに執着する心(=煩悩の一つ)にほか
なりません。

 唯識思想の実践としての瞑想によって、自己の内面に集中し、心の奥深くに
潜むその「自我執着心」を観察します。そうすることで、深層心のくもりを取
り除いていけば、今まで自分だと思っていたものが本来は「無我」であること
に気づき、「自我執着心」が生み出す自縄自縛の苦しみや、他者との対立の悩
みから解放されるということです。そのとき「自分とは何者か」という問いに
対する答えは自ずから明らかになるというのが、番組の第2回の放映内容のポイ
ントだったと思います。
                               北松拓也


時代の変わり目
   2017/5/25 (木) 18:56 by 北松拓也 No.20170525185640

 数日前に或るニュースサイトに書かれていた記事が衝撃的でした。世界ランク
1位の中国の囲碁棋士が、Google のAI(人工知能)ソフト「アルファ碁」に
敗れたというのです。昨年、「アルファ碁」が韓国のトップレベルのプロ棋士に
圧勝したことが大きな話題になりましたが、今回の「アルファ碁」は、その中身
がさらに進化しているそうで、ついに世界一のプロ棋士をも打ち破るだけの実力
を備えたわけです。

 囲碁はボードゲームの中で最も複雑とされています。ですから、常識的に考え
れば、プロ棋士に勝つ囲碁のAIソフトを作るのは将棋の場合よりもずっと難し
いはずです。ところが、今回の「アルファ碁」と世界ランク1位の囲碁棋士の対
局結果により、もはやそのような先入観は意味を失いました。かつては夢のよう
な話と思われていた、最高レベルのプロ棋士を上回る囲碁のAIソフトが、すで
に実現してしまっているのです。しかも、このAIソフトの技術は他の分野にも
広く応用が可能だと言います。

 近年、このAIをはじめ、自動運転やドローン、さらにIoT(Internet of 
Things)などのテクノロジーが急速に進歩して、私たちの生活を大きく変えよう
としています。これらの活用により、私たちの暮らしはさらに便利になるとは思
います。しかし、それが幸か不幸かという点については別問題です。次第に人間
不要の世の中になってしまうのではないかという不安もあり、先行きは混沌とし
ています。

 怒涛のように押し寄せる新しい科学技術の群れに、私たちは日々接しています。
こういう時代こそ、人が生きる上で本当に必要なものは何かという原点に立ち返
って自らを見つめ直すことが大切ではないかと考えます。そうでないと、時代の
流れにただ押し流されるばかりで、自己の本来性を喪失してしまうのではないか
と懸念されます。
                                北松拓也


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「心のともしび」 文/北松 拓也
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