心のともしび
北松拓也
 
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「しがらみ政治」の英語表現
   2017/10/7 (土) 17:15 by 北松拓也 No.20171007171516

 昔読んだ司馬遼太郎の小説によれば、政治家には2種類あるといいます。一
方は「経綸(けいりん)」に努める政治家であり、もう一方は「周旋(しゅう
せん)」に励む政治家です。

 国語辞典を引くと、「経綸」とは「国家を治めととのえること」であるのに
対して、「周旋」は「売買や雇用などで、仲に立って世話をすること。取持ち。
斡旋(あっせん)」です。つまり、「周旋」は利害の調整をすることを意味し
ますから、当然のことながら志の高い政治家は「経綸」を心がける人というこ
とになります。

 日本の初代総理大臣である伊藤博文は、伊藤俊輔という名で松下村塾の塾生
だった頃、師の吉田松陰から「周旋の才あり」と評価されたものの、他の面で
はあまり才能を認めてもらえなかったようです。伊藤博文はそのことに不満を
抱いていたと、司馬遼太郎の小説に書かれていたように記憶しています。その
せいかどうか分かりませんが、後年、山県有朋がかつて松下村塾生だったこと
を自慢げに語っていたのにひきかえ、伊藤博文は当時のことをあまり話したが
らなかったというエピソードが伝えられています。

 それはさておき、本題の「しがらみ政治」の英語表現ですが、ただ「しがら
み」というだけでは、それが具体的にどういうことなのか曖昧模糊としていて
英訳しづらいところです。たいていの日本人は、政治に関して「しがらみ」と
いう言葉を聞けば、選挙資金や票集めの支援などを受けた見返りに何らかの便
宜を図ることだと察しがつくのですが、これを英語で表現する場合には、その
ような利得が絡む関係であることをある程度はっきり示さなければ理解されな
いでしょう。

 そういったことを考慮したと思われる英語表現が、読売新聞の英語版である
「The Japan News」のホームページに昨日掲載されていました。それは、a 
departure from politics constrained by special interests(特別な利害関
係にある人々によって束縛された政治からの脱却)という表現です。これは要
するに「しがらみ政治からの脱却」ということを意味しています。そして、先
述の政治家の分類でいえば、「しがらみ政治」をするのは「周旋」に励む人と
いうことになるでしょう。

 しかし、そうは言っても、実際に政治活動をするには大金がかかり、また自
分に投票してくれる人を多数集めなければ選挙で当選できませんので、そうい
った「しがらみ」を完全に断ち切ることは、非常に難しいことだろうと思いま
す。ですから、現実的な対応としては、例えば政治資金は薄く広く集めるよう
にして、支援者や支持団体との関係も束縛にならない程度の距離が取れるよう
な仕組みを作ることが肝要でしょう。

 ちなみに、私はこの記事の日本語版を見ていないので確証はありませんが、
同じ記事の中にあった a union of convenience という表現は「野合」を英訳
したものだろうと思います。


ネアンデルタール人の脳の発達
   2017/9/24 (日) 23:51 by 北松拓也 No.20170924235122

 イギリスの BBS NEWS のホームページについ最近掲載された英文記事による
と、スペインの研究チームが7歳半で死亡したと推定される旧石器時代のネア
ンデルタール人の骨を発見し、その骨の分析から非常に興味深いことが分かっ
たそうです。というのは、現生人類であるホモサピエンスの場合、7歳半にな
れば脳の発達はほぼ完了しているはずですが、そのネアンデルタール人の頭蓋
骨を調べると、7歳半の段階で脳がまだ発達の途中だというのです。

 従来の認識では、すべての動物の中でホモサピエンスの脳は発達するのに最
も長い時間がかかり、それはすなわち最も知能が高いことの証拠であると考え
られてきました。ところが、今回の研究では、ネアンデルタール人の方がホモ
サピエンスよりも脳の発達に長い年月を要していたと推測されるため、ネアン
デルタール人はホモサピエンスよりも知能が上であった可能性が出てきたこと
になります。

 このことに関して、スペインの研究チームのリーダーは、ホモサピエンスよ
りもネアンデルタール人の方が身体が大きかったため、ネアンデルタール人の
脳もその分だけ発達に時間がかかったと見ることができ、ネアンデルタール人
がわれわれホモサピエンスよりも賢かったということにはならないとの見解を
示したそうです。

 さて、真相は果たしてどうなのでしょうか。この問題についての今後のさら
なる研究が期待されるところです。

 ちなみに、ネアンデルタール人がホモサピエンスよりも精巧な石器を作って
いたことは、人類学の分野ではずいぶん昔から知られています。


地球温暖化がもたらす南アジアの危機
   2017/8/4 (金) 19:35 by 北松拓也 No.20170804193554

 8月2日付でイギリスの「BBC News」のサイトに、地球温暖化に関する新しい
研究結果を伝える記事が掲載され、かなり衝撃的な内容でした。記事の見出し
は、Warming to boost deadly humidity levels across South Asia(温暖化に
より南アジア全域で命にかかわるほど湿度が上昇)というもので、二酸化炭素
の削減による地球温暖化への取り組みが、もはや待ったなしの急務になってい
ることを示すものでした。ちなみに、南アジアには世界の総人口の5分の1が暮
らしています。

 この記事のリードの部分には、Millions of people living in South Asia 
face a deadly threat from heat and humidity driven by global warming 
according to a new study.(新しい研究によれば、南アジアに居住する何百万
もの人々が、地球温暖化によって引き起こされる暑さと湿気により命の脅威に
さらされる)と書かれていて、温度だけではなく湿度の問題も生命維持には見
逃してはならない重要なポイントであることが分かります。

 そして、記事は次のように予測していました。Most of India, Pakistan 
and Bangladesh will experience temperatures close to the limits of 
survivability by 2100, without emissions reductions.((二酸化炭素の)
排出量を削減しなければ、インド、パキスタン及びバングラデシュの大部分が
2100年までに生存可能な限界に近い気温に見舞われることになる)。

 ところでこの記事によれば、世界中のほとんどの公的な気象台では2種類の
温度計を使って気温を計っているといいます。一つは dry bulb thermometer
(乾球温度計)で、もう一つは wet bulb thermometer(湿球温度計)です。乾
球温度計は空気中の温度を計るものであるのに対して、湿球温度計は空気中の
相対湿度(relative humidity)を計るもので、湿球温度計による計測結果は、空
気中の温度を単にそのまま計ったものよりも通常低いそうです。

 さて、ここで覚えておきたいことは、For humans, this wet bulb reading 
is critically important.(人間にとって、湿球温度計の表示度数は極めて重
要である)ということです。この湿球温度計で示される私たちの周囲の環境の
温度が35度かそれ以上になると、次のようなことが起きます。our ability to 
lose heat declines rapidly and even the fittest of people would die in 
around six hours.(私たちの身体が熱を放出する能力が急激に低下して、最も
健康で適応力のある人たちでさえ、およそ6時間ほどで落命する恐れがある)。

 しかし、35度というのは、あくまでも「最も健康で適応力のある人たち」を
対象にした話です。そのあとに書かれた説明によれば、湿球温度計での35度は
人間が生存することが可能な限度であると考えられるけれども、ほとんどの人
たちにとっては31度であっても極めて危険なレベルであると考えられるそうで
す。


脱ガソリン車の時代へ
   2017/8/3 (木) 19:56 by 北松拓也 No.20170803195628

 マスコミの報道によると、イギリス政府とフランス政府は先月、2040年まで
にガソリンなどで走る内燃機関の車の販売を禁止するという方針を発表したと
のことです。

 かつて電車が登場したことにより、それまで鉄道の主役として活躍していた
蒸気機関車が少しずつ使われなくなり姿を消していきました。それと同じよう
に、電気自動車(EV)が急速に台頭して来た今、地球温暖化や大気汚染の原因と
なる排気ガスを放出するガソリン車やディーゼル車などは次第に疎まれるよう
になり、その結果いよいよ消えゆく運命にさしかかったということなのでしょ
う。時代の移り変わりをひしひしと感じます。

 これまで長年に渡って血と汗のにじむ努力によって優れた内燃機関の研究開
発や製造に携わってきた人々にとって、この報道は他国のことながらもガソリ
ン車の輸出に直接影響することなので、少なからず寂しく悲しい知らせとして
心に響いたのではないかと想像します。

 英仏両国では、たとえ20年以上先のことではあっても、やがては内燃機関の
熟練エンジニアも整備士も社会から必要とされなくなり、職を失う日がやって
来ます。そして、そう遠くない未来には日本政府もこうした脱ガソリン車を目
指す国々の動きに追随することが予想されます。世の中の進歩と言われるもの
の陰には、こうした盛衰のドラマがあります。

 考えてみれば、ガソリンを生産するための石油資源の埋蔵量にも限りがあり
ます。それがあとどれくらいなのか見当がつきませんが、石油が枯渇する前に
長い年月をかけて計画的に内燃機関の車の製造・販売を停止する方向に持って
行くことは、内燃機関の車の終焉の形としてはソフト・ランディングになるは
ずです。しかも、それは長期的な環境負荷の軽減という利点がありますので、
多くの人々に受け入れられる合理性があると言えそうです。


前人未到の大記録(2)大相撲の横綱白鵬関
   2017/7/26 (水) 18:34 by 北松拓也 No.20170726183424

 今月行われた大相撲名古屋場所(7月場所)では、横綱白鵬が14勝1敗の好成
績で、2場所連続となる通算39回目の幕内優勝を果たしました。これは横綱大鵬
の現役時代の32回という優勝回数を7回も上回る幕内最多優勝記録です。

 また、この名古屋場所は、白鵬関が通算勝ち星数で歴代2位の横綱千代の富士
の1045勝、さらには歴代1位の大関魁皇の1047勝の記録に挑戦する場所でもあり、
それが大相撲ファンの大きな関心の的になっていました。32歳の白鵬関はその
どちらの通算勝利記録も更新し、13日目には歴代1位となる前人未到の1048勝を
達成しました。そして、14日目も勝ち、千秋楽では横綱日馬富士を破って、通
算勝利数を1050勝に伸ばしました。

 これらが遠い未来にも色褪(いろあ)せることのない実に輝かしい業績であ
るのはもちろんですが、白鵬関が今後もこれらの自らの記録を更新し続けるで
あろうことを誰もが疑わずに期待し、楽しみにしているところが、この大横綱
の持つ限りない潜在力の素晴らしいところです。


前人未到の大記録(1)テニスのフェデラー選手
   2017/7/26 (水) 18:28 by 北松拓也 No.20170726182847

 今月イギリスで行われたテニスの四大大会(グランドスラム)の一つ、ウイ
ンブルドン選手権(全英オープンテニス)の男子シングルスで「芝の帝王」こ
とロジャー・フェデラー選手が、通算8回目の優勝を果たし、前人未到のウイン
ブルドン最多優勝記録を打ち立てました。

 ゲルマン系のスイス人らしさがあらわれたフェデラー選手の精悍な風貌の奥
には、揺るぎのない強靱な闘魂(ファイティングスピリット)が秘められてい
るのが感じられます。その冷静沈着にして精密で安定感のあるプレーは、試合
会場で観戦する人々の心を魅了すばかりでなく、テレビ中継で見守る人々の目
も釘付けにさせずにはおかないパワーがあります。

 すでに35歳という年齢になり、体力的には衰えを感じ始めているはずのフェ
デラー選手ですが、今回のウインブルドン選手権では、決勝戦も含めて1セッ
トも落とすことなく全試合ストレート勝ちの末に優勝のトロフィーを手にする
という偉業を成し遂げました。まさに超人的な活躍です。


アメリカの分断社会とは?
   2017/7/21 (金) 18:34 by 北松拓也 No.20170721183448

 アメリカのトランプ大統領が昨日(7月20日)大統領就任6ヶ月の節目を迎え、
そのトランプ大統領をどう評価するかというニュース番組がいくつかのテレビ
局により放送されました。その中で特に印象に残ったのは、NHK総合テレビ
の「ニュースウォッチ9」の中で、インタビューを受けた中国系の女性研究者
の言葉でした。その研究者は、これまでのトランプ大統領の仕事ぶりについて
「70点」と比較的高く評価し、次のような意味のことを述べていました。「反
トランプ派の人たちは、トランプ大統領がアメリカ社会を分断していると言う
けれども、それは違う。アメリカ社会がすでに分断されていたという事実があ
ったからこそ、トランプ氏が大統領に選ばれたのである。反トランプ派の人た
ちはそのアメリカ社会の時代の変化を認めたうえで問題に向き合わなければな
らない」。

 この言葉を聞いて、なるほど一理ある見方だと思いました。それと同時に、
かつてカール・マルクスがヘーゲルの弁証法的歴史観に対して「望遠鏡を逆さ
まにして覗いているようなものだ」と批判したのを思い出しました。マルクス
は社会の下部構造の変化が上部構造を規定すると考えたわけですが、上記の研
究者の見解は、まさにアメリカ社会の既存の分断という下部構造が規定因子と
なって上部構造としてのトランプ大統領を生み出したという論法になるでしょ
う。したがって、この研究者の洞察が正しければ、アメリカ社会における既存
の分断状態という下部構造の問題を解決しない限り、上部構造においては今後
も必然的に第2、第3のトランプ大統領が出現することになります。

 さて、アメリカ社会における既存の分断状態とは何かと言えば、それはやは
り中間所得層がますます薄くなり、富める人々と貧しい人々との間の格差拡大
に歯止めがかからないということではないかと思います。そうしたなかで、社
会から見捨てられている、あるいは取り残されていると感じる人々、特に「ラ
スト・ベルト」に暮らす白人労働者の人たちの生活の困窮と不満の高まりが、
アメリカ社会の非常に大きな不安定要因になっていると言えるでしょう。格差
是正という言葉を口に出すのは簡単ですが、それを実現するための決定的な方
法論はまだ暗中模索の状態ではないでしょうか。

 トランプ大統領の支持率は今も40パーセント前後を維持しているようで、依
然としてトランプ大統領の手腕に将来の望みを託している大勢のアメリカ市民
が根強くいることを物語っています。そうした人々の生活者としての切実な思
いと、自由・平等・人権などの民主主義の理想を高く掲げる反トランプ派の人
々による人間としての尊厳をかけた異議申し立ての叫びが、アメリカ全土でせ
めぎ合っているのがアメリカ社会の現状であろうと思います。

 これからのアメリカがどうなっていくのか。それは目下のところ私には予測
不可能です。しかし、せめて世界的な喫緊の課題になっている気候変動への取
り組みについては、アメリカも積極的に協力する姿勢を示してほしいと願って
います。


ヒアリの日本上陸
   2017/7/18 (火) 18:11 by 北松拓也 No.20170718181122

 外来危険生物として日本に最も侵入してほしくないものの一つと言われてい
たのが、ヒアリです。そのヒアリが先日、日本国内にある港のコンテナヤード
で初めて見つかると、あれよあれよという間に日本各地の港やそれ以外の場所
でも発見されるようになり、人々の間に衝撃が走りました。

 マスコミのニュースで目にする「ヒアリ」は、昆虫の「アリ」であることは
言うまでもありません。しかし、カタカナで表記される「ヒアリ」という文字
だけでは、この「ヒ」の部分が何を意味しているのか、明確に知ることは難し
いでしょう。このアリが赤みがかった色をしているから緋色の緋(ひ)なのか
と思われる人がいるかもしれません。ところが、それを英語で書いたのを見れ
ば一目瞭然です。つまり、英語では fire ant ですから、直訳すれば「火蟻」
=「ヒアリ」ということになります。

 ヒアリは強い毒をもったアリで、これに刺されると「火」に触れたような激
しい痛みがあることから、fire ant と呼ばれるようになったようです。ちな
みに、「強い毒をもった」は、英語で highly poisonous と表現しますので、
「強い毒をもったヒアリたち」は、highly poisonous fire ants となります。

 7月14日付の NHK world news では、Fire ants found at Yokohama Port(横
浜港でヒアリ発見)と題するニュースが報じられました。その前に、すでに東
京でもヒアリが見つかっていますので、首都圏で暮らす人々はこの新たな脅威
に対処しなければなりません。

 私たちの現在の生活は海外との自由で活発な貿易よって支えられています。
それは同時に、海外から運ばれてくる膨大な量の物資のコンテナに乗って招か
れざる危険生物も侵入してくる時代でもあるのです。日本が国是としている自
由貿易はすばらしいけれども、多くの便利さの享受の陰には何らかの危険性が
潜んでいるように、これもまたグローバル化が進む世界の「諸刃の剣」(英語
では double-edged sword)であると言えるでしょう。


日本人にとっての基本の色
   2017/7/10 (月) 19:17 by 北松拓也 No.20170710191717

 日本人の名字には色の名前のつくものが結構あります。先月下旬に放映され
たNHK総合テレビ、木曜日の夜の番組「日本人のおなまえっ!」の調査によ
れば、その中でも圧倒的多数を占めるのは、「青、赤、白、黒」の4色だそうで
す。確かに、青木さん、青山さん、赤井さん、赤塚さん、白石さん、白川さん、
黒田さん、黒岩さんなどといった名字は、ごく普通に見たり聞いたりします。

 同番組の話の中で興味を惹かれたことの一つは、『古事記』や『万葉集』に
用いられている色彩名のほどんどが、この4色であるという点です。要するに、
8世紀までの日本では、人々は身の回りの色彩を表現するのにこの4色でほぼ間
に合わせていたということかもしれません。もしそうだとすれば、白黒に青と
赤のたった2色を加えただけという、実に素朴すぎるほどの色彩語でよく日常の
用を済ませることができたものだと不思議にさえ感じられます。

 ちなみに、陶磁器の世界では「中国は形(form)、朝鮮半島は線(line)、日本
は色(color)」がすばらしいと言われていると、だいぶ昔に見たNHKのテレビ
英会話の番組で語られていたのを思い出します。そんな日本であっても奈良時
代のころには、わずか4種類の色彩語以外にはほとんど頼らずに私たちの祖先は
色を識別して暮らしていたのでしょうか。それならば、その後の日本人は色彩
の認識や取り扱いの上で一大飛躍をしたことになります。

 特に平安時代になると、それ以前のように身分を表すのに装身具を用いるこ
とがほとんどなくなり、その代わりに衣服の色で身分の上下を表すようになっ
たと言われています。「襲(かさね)の色目」が発達したのもその頃でしょう。
その意味で、平安時代は日本人の生活が一気に色彩あふれるようになった時期
だと言えるのかもしれません。

 それでも上代の日本人の4色の原風景は、現代の日本語の中にも残っている
のを見ることができます。例えば、現代の日常語では、今の日本人の感覚では
緑であるはずなのに、「青葉、青汁、青のり、青竹、青信号」などと言ったり、
厳密には赤には分類されないはずなのに、「赤土、赤みそ、赤さび」といった
言葉が使われたりします。

 また、大相撲の土俵に関して使われる「〜房下」という言い方があります。
テレビやラジオの大相撲放送で、アナウンサーが「青房下、赤房下、黒房下、
白房下」と審判席を区別して呼んでいるのをよく聞きます。ただし、この場合
の4色は、中国の古代思想にある「四神(しじん)」、つまり「天の四方の方角
をつかさどる神=東の青竜、西の白虎、南の朱雀、北の玄武」や「四季をつか
さどる神=春の句芒、夏の祝融、秋の蓐収、冬の玄冥」の影響を受けたものか
もしれません。(注:青は春、赤は夏、白は秋、黒は冬を表す)

 ついでながら、上記の「青房」は、大相撲中継のテレビ画面で見る限り、明
確な緑色です。


良きことはカタツムリのように
   2017/6/17 (土) 18:48 by 北松拓也 No.20170617184820

 インド独立の父と呼ばれるマハトマ・ガンディーの言葉の中に、「良きこと
はカタツムリのようにゆっくり進む」というものがあります。しかし西洋の近
代は、生産の効率を高め、スピードを上げることを要求します。

 イギリス帝国によるインド支配からの脱却を目指したガンディーは、スワデ
ーシー(swadeshi とは、「swa 自らの」+「deshi 国、土地」=「母国」が原
義で、「国産品愛用」と訳されます)をスローガンの一つに掲げ、機械で綿糸
を紡(つむ)ぐのが当たり前だった当時において、自分の手で糸車を回して綿
糸を紡ぐ運動を始めました。

 機械で糸を紡ぐのと比べたら、このような手回しの糸紡ぎは、文字通り「カ
タツムリのようにゆっくり」だったに違いありません。ですから、ガンディー
のこうした運動は単にイギリスの支配に対するだけではなく、西洋の近代とい
うものに対する抵抗運動でもあったと言われています。

 ことろで、現在の日本社会、特に都会生活の中では、経済効率がモノを言い、
スピードを上げることを互いに競い合っています。企業も個人も、他者よりも
万事速く出来ることが高く評価されます。そのため、皆が時間に追われる生活
をしているので、それが半ば当たり前のようになっています。しかし、そうい
う生活の中で精神的に次第にすり切れていくのを自覚している人たちも少なく
ないと思います。

 何事につけ速さを要求される日々の生活に翻弄され疲弊した人たちが、休暇
の旅先で感じるようなゆっくりと進む時間の流れは、少なくとも本人にとって
「良きこと」に違いありません。それでもなかなか近代の呪縛から逃れられな
いのが、現代人の実相です。


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「心のともしび」 文/北松拓也
 Copyright © Takuya Kitamatsu 2017