則天去私の文学論 『英国篇:薔薇戦争』

長谷部さかな 著

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忠義(4)
   2017/8/18 (金) 06:45 by Sakana No.20170818064537

08月18日

"York. Against them both my true joints bended be,
 Ill mayst thou thrive, if thou grant any grace!" 
"Duchess. His eyes do drop no tears, his prayers are in jest;
  His words come from his mouth, ours from our breast."
"King. I pardon him, as God pardon me."
"Duchess. O happy vantage of a kneeling knee.
"King. With all my heart I pardon him."
"Duchess. A god on earth thou art,"

ヨーク この二人をお許したまらぬよう、忠義の膝を折り曲げお願いいたします。
公爵夫人 彼の目からは涙が落ちてまいりません。たわむれに嘆願しているのです。/
  彼の言葉は口から出てまいりますが、私どものは心の底から出てくるのです。
王 彼を許そう、神がわたしを許し給うごとくに。
公爵夫人 ああ、跪く膝のありがたい功徳よ。今一遍、「許す」と繰り返したまへ。
王 心の底から彼を許そう。
公爵夫人 あなた様はこの世の神様です。
(『リチャード二世』第五幕 第三場)『文学論』p117 夏目漱石訳)   

「この場面について漱石は、<古往今来女性
とは如此く正義の念に乏しきものにして、通
常識者が見て笑ふべき言語動作を敢てして、
毫も恥とせざることあり。これこの女性がそ
の夫とよく対照して裏面より忠義の真面目を
発揮する所以なり>と評しています。どう思
いますか?」
「<女性とは如此く正義の念に乏しきもの>
とは、ひどい女性蔑視の発言だ」
「『文学論』の執筆は日露戦争が行われた明
治三十年代ですから、まだ平塚雷鳥のように
<元始、女性は実に太陽であった。真正の人
であった>(『青踏』)と主張する<新しい
女>は登場していません」
「ヨーク公の正義の念や忠義にも疑わしいと
ころがある。彼は単なる日和見主義者で、要
するに強い者につくのが忠義だと心得ていた
のではないか」
「では、過去にさかのぼって、ヨーク公のそ
れまでの言動をふりかえってみましょう」


『薔薇戦争』まとめ 2017年8月
   2017/8/21 (月) 06:09 by Sakana No.20170821060903

2017年8月

・ランカスター家に訪れる天の眼(太陽)
・ヨーク家の太陽
・忠義(loyalty)
・忠義(2)
・忠義(3)
・忠義(4)

「太陽はあるときはランカスター家の上にのぼ
り、またあるときはヨーク家の上にものぼりま
す」
「時差がある。ランカスター家のボリングブル
ックがリチャード二世の王位を奪い、ヘンリー
四世として国王の座についたが、ヨーク公エド
ムンド・オヴ・ラングレイには自らが国王にな
ろうとする野心はなかった」
「忍耐の人、忠義の人、日和見の人、二流の人、
そして長寿の人です」
「彼の子孫から王位への野心を燃やすエドワー
ド四世やリチャード三世が生まれたのは歴史の
皮肉というしかない」
「<天がすべておみそなわしたことを忘れぬよ
うにな>(Lest you mistake the heavens are 
o'er our heads.)と、ボリングブルックをいま
しめていたのに、 <われらが国王ヘンリー四世
陛下、万歳!>(And long live Henry, fourth 
of that name!")と叫んで、ごまをすり、息子
のオーマール公を<謀反だ! けがらわしい謀反
だ!  悪党め! 謀反人め! 下郎め>(Treason! 
foul treason! Villain!  Traitor! Slave!")
とののしります。忠義の人かもしれませんが、
まったく節操がなく、恥も外聞もない行動をと
っているように見えます」
「まったく長生きをする老人にろくな者はいな
い。(There's no fool like an old fool.)」
      (『薔薇戦争』第一部了。
           第二部以降については未定)




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則天去私の文学論 『英国篇:薔薇戦争』 長谷部さかな 著
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