則天去私の文学論 『中国篇:孔孟老荘』

長谷部さかな 著

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天の道は争わずして善く勝つ
   2017/8/20 (日) 07:51 by Sakana No.20170820075154

8月20日

天の道は争わずして善く勝つ

 「『老子』第七十三章で、<天網恢々
疎にして漏らさず>の意味をもっとよく
理解するために、その前文も読んでみま
しょう」
「前文があるのか」
「天の道は、争わずして善く勝ち、言わずし
て善く応じ、召さずして自ら来たし、繟然(せ
んぜん)として善く謀る(Heaven,wins a victory 
without any battle, answers without speaking,
gathers everything without calling, and is
loose but has a grand program.」
「謀る謀ると思いしに、却って天に謀られた」
「小智は菩提の妨げ」


天網恢々疎にして漏らさず
   2017/8/13 (日) 09:01 by Sakana No.20170813090108

8月13日

「天の張る網は、広くて網の目が粗いよ
うに見えるが、悪い奴を網の目から漏ら
すことはない。これを、天網恢々疎にし
て漏らさず、といいます(『老子』73
篇)」。
「そんな呑気なことをいっているから、
老大国はアヘン戦争で英仏などの列強に
してやられた」
「中国四千年の歴史を長い目で見てくだ
さい。Heaven’s net  has large meshes, but 
nothing escapes.あるいは、Heaven’s vengeance 
is slow but sure.という箴言の深い意味が
わかります」


天知る地知る我知る人知る
   2017/8/5 (土) 06:37 by Sakana No.20170805063734

8月6日

「<お天道様はお見通し>と似た中国の
箴言に<天知る地知る我知る人知る>が
ありますね。これも因果応報、悪い事は
できないものだという訓戒に通じます」
「戦後の民主主義で、道徳教育をおろそ
かにしたため、その訓戒は封建的思想と
して見捨てられた」
「最近は道徳教育を復活しようという動
きも目立ってきましたが、道徳を唱道す
る政治家や教育者に道徳観が欠如してい
るのが問題です。彼らは都合が悪くなる
と、ウソをついたり、記憶がないと、言
い逃れをします。初心に返り、<天知る
地知る我知る人知る>("Heavens are got 
to know. The ground is got to know. Self is 
got to know. People are got to know. An evil 
deed is certainly discovered.”)という認識
から出直したほうがよいと思います」
「出典は『後漢書』だが、老荘思想のにお
いがする」
「楊震が王蜜のさし出すわいろを断った時
のセリフです。誰も知らないだろうと思っ
ていても、隠し事はいつかは露見するもの
だ(”An evil deed is certainly discovered.”)。




お天道様はお見通し
   2017/7/30 (日) 09:21 by Sakana No.20170730092104

7月30日

「お天道様はお見通し(Everything lies open to the
 heaven.)は、悪い事はできないものという因果応報
の思想と結びつき、日本人の遺伝子DNAに残ってい
ると思いますが、出典はご存じですか」
「さあ、『論語』や『老子』ではないだろう。やはり
縄文人の言い伝えかな」
「太陽神ラーを信仰した古代エジプト人からの言い伝
えとは考えられないでしょうか」
「裏付ける資料はなさそうだ」
「沙翁の歴史劇を読んでいると、似たような表現にお
目にかかります。たとえば、『リチャード二世』)で、
ヨーク公エドムンド・オヴ・ラングレイが<天がすべ
ておみそなわしたことを忘れぬようにな(Lest you mistake 
the heavens are o'er our heads)><だがこれも天の
み心があずかっているにちがいない(But heaven hath a 
hand in these events)>(『リチャード二世』))など」, 
「地動説ではなく、天動説を信じていた頃の話だ。今や
相対性原理の時代に、お天道様はお見通しと秋葉原で叫
んでも、こんな人たちを動かすのは難しい」
「でも、お天道様は毎日、東の空から上ってきます。悪
いことをすればいつか報いがきます。外に出て、お天道
様を拝みましょう」
「台風が接近しているせいか、今朝は曇りだ」



怪力乱神を語らず
   2017/7/24 (月) 11:08 by Sakana No.20170724110846

7月23日

「子、怪力乱神を語らず(論語 述而第七)について
考えたいと思います」
「意味がよくわからん」
「Confucius didn’t talk about occult, violent, obscene 
and spiriatual matters.という英訳を参考にすれば、
わかります。occultはオカルト、violentは暴力、
obsceneは道理にそむいて社会を乱すこと、spiriatualは摩
訶不思議な神秘という意味のようです」
「孔子のいう神はGodではないし、Heavenでもない」
「天命と結びつけて考えないでください。天命は論語
では重要なキーワードです」
「子.怪力乱天を語らず、ではないということだけ
はわかった」


天を怨みず
   2017/7/16 (日) 08:34 by Sakana No.20170716083403

7月16日

「論語憲問篇の<我を知る者は其れ天か>はその
前に<天を怨みず、人を尤(とが)めず、下学して上達す>
という文があります(I don’t have grudge to the
heaven. I don’t blame anyone. I have been
learning from trivial to lofty things.)
「愚痴をこぼさないのは潔い態度だが、その前に
<子曰わく、我知ること莫(な)きかな>と愚痴っ
ている。それに対して、子貢(しこう)が曰わく、
何爲(なんす)れぞ其れ子を知ること莫からん>と
慰めてくれたので、<天を怨みず、人を尤(とが)(とが)
めず>と胸を張ってみせたのだが、不遇の身におち
こんだとしても、それは自分の自由意志の結果だか
ら、天を怨まないのは当然だろう」
「それは聖人にたいしてきびしい物言いですね」
「<下学して上達す>も当然のことを言っているだ
けのことだ」



我を知る者は、其れ天なるか
   2017/7/9 (日) 05:00 by Sakana No.20170709050053

7月09日

「我を知る者は、其れ天なるか、と孔子は言って
おられます(Only the heaven understands me.憲
問篇第十四の三十七)」
「その天とは神だろうか」
「いいえ、神ではありません。<子、怪・力・乱・
神を語らず>(Confucius didn’t talk about occult,
violent, obscene and spiriatual matters,) ですから」
「しかし、天に人格がなければ。子を知ることは
できないのではないか」
「お天道様はお見通しです。(Everything lies open
to the heaven.)」



天は自らを助くる者を助く
   2017/7/2 (日) 07:26 by Sakana No.20170702072608

7月02日

「<天は自らを助くる者を助く>(Heaven 
helps those who help themselves)はサミュ
エル・スマイルズの”Self-Help”の序文にある
言葉です」
「明治初期、中村正直によって『西国立志編』
として邦訳され、福沢諭吉の『学問のすすめ』
とともにベストセラーになった」
「福沢諭吉『学問のすすめ』の<天は人の上
に人を造らず人の下に人を造らず>とともに
あっという間に日本全国に広がりました。当
時の日本人の教養の高さが注目されます」
「やはり下級士族や百姓町人の間でも儒学が
普及していたことが大きいね。教養の面では
明治人は二十一世紀の平成日本人を上まわっ
ている」
「特に<天>という言葉に共感する感受性に
関しては、平成人は退化していると思います」
「山田雅重『日英ことわざ文化事典』(丸善
出版)によれば、”Heaven helps those who help 
Themselves”は、『イソップ物語』の「牛追
いとヘラクレス」に由来しているそうだ」
「その話は『吾輩は猫である』でも迷亭の口
から出まかせのかたちで使われています」




天は人の上に人を造らず
   2017/6/25 (日) 09:01 by Sakana No.20170625090135


6月25日

「<天は人の上に人を造らず人の下に
人を造らず>と福沢諭吉は言いました」
「『学問のすすめ』で福沢が言ったのは
<天は人の上に人を造らず人の下に人
を造らずと言えり>だ。アメリカの独立
宣言で、<全ての人間は平等に造られて
いる(all men are created equal)>とうた
ってあるのを日本語流に言い直しただけ
であって、福沢諭吉自身のオリジナルな
発想ではない」
「アメリカの独立宣言はト−マス・ジェ
ファーソンが書いたと言われていますが、
ジェファーソンは天(heaven)という言
葉は使っていません」
「福沢の教養の根底には伊藤仁斎派の古
学があったと、小林秀雄は言う。<天は
人の上に人を造らず人の下に人を造らず>
を言う時、彼は。仁斎の<人の外に道なく、
道の外に人なし>想っていたと推測しても
いいと」
「それは小林秀雄の推測ですね。孔子の天
は、仁斎の天でもないし、諭吉の天でもな
いと思います」
「では、孔子のいう天とは何だ?」
「それを考えようとしているのではないで
すか」


天命を知るとは
   2017/6/18 (日) 10:31 by Sakana No.20170618103124

6月18日

「小林秀雄は『天命を知るとは』という一文で、
<こんな言葉の意味を、知力を尽くして詮索
するのが学問であったとは、今日の通年から
すれば余程おかしな事であるが、と書いてい
ます」
「小林秀雄の今日というのは何時だ?」
「昭和三十八年です。掲載誌は文藝春秋」
「すると今から半世紀前だが、天命を知るということ
ばは当時、すでに古びていた」
「しかし、孔子が五十にして天命を知ると言ったのは
約二千四百年前、それについて伊藤仁斎や荻生徂徠が
知力を尽くして論じてからでも三百年は経っているの
に、その古びたことばは今も生きています」
「伊藤仁斎は何と言ったのだ?」
「小林秀雄によれば、「天命を知る」という命題の重点
は、「天命」にはない、「知る」にあるというのです」
「天命とは何かを考えても仕方がないというのか」
「天は如何なる理のものかの説明を知るという事なら、
何も君子を待つまでもない、誰にでも出来る事だ。知
るという言葉を浅薄に解してはならない。知るとは処
世の経験を重ねる事であるというのです」
「処世の経験を重ねる事なら誰にでも出来る」
「荻生徂徠は、そういう考えを頭から否定し、「仁斎先
生得意の言也」と笑った。彼の考えによれば、孔子の思
想は、古文献に徴した限り、宗教でもなければ、哲学で
もない。のみならず、彼には、どんな学問も発明した形
跡はない。ひたすら民を安んずるという現実的な具体的
な「先王之道」を説いて止まなかった人だそうです」
「しかし、天命を、the Decree of Heavenとか、heaven’s
willとか、英語で考えれば、宗教か哲学になってしまう」



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則天去私の文学論 『中国篇:孔孟老荘』 長谷部さかな 著
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