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読書求道記> 『資本主義の終焉と歴史の危機』
   2015/10/6 (火) 18:22 by 北松拓也 No.20151006182242

水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)

 この本によれば、先進国ではすでに1970年代半ばに交易条件が悪化しており、
「地理的・物理的空間」(=実物経済)での利潤低下に直面し、モノづくりで
は割に合わなくなっていたという。そこで、アメリカは資本主義に代わる新た
なシステムを構築するのではなく、資本主義の延命策として別の空間、すなわ
ち「電子・金融空間」に利潤のチャンスを見つけ、「金融帝国」化していくと
いう道を選んだ、と著者は分析している。

 しかし、「周辺」に対して「中心」が行う「蒐集」という活動において利潤
を上げるのに最も効率の良かったこれまでの資本主義システムでは、今や「金
融帝国」となったアメリカでさえも、「周辺」から利潤を上げることに行き詰
っている。つまり、グローバリゼーションの結果、もはや「周辺」と呼べるも
のが存在しなくなってしまったからだ。そのような状況に置かれた資本家たち
は、今度は外の世界に「周辺」を求めるのではなく、国内に「周辺」を作り、
そこから利潤を得ようとし始めた。そのために、国内における経済格差が拡大
し、中間層が次第に薄くなると同時に、社会全体で「持てる者」と「持たない
者」へ二極分化が進行している、というのが著者の説である。

 これはおそらく現在の世界認識として間違ってはいないだろうと思う。ただ、
この本の著者は、このような限界に突き当たった資本主義の次に創造されるで
あろう新たな経済システムがどのようなものであるのかというビジョンについ
ては、今は示すことができないと繰り返し述べている。

 こうしてみると、「地理的・物理的空間」の拡大はおろか「電子・金融空間」
の拡大さえも頭打ちになって利潤が得られなくなった資本主義の危機的状況の
只中に、いま私たちは暮らしていることが分かる。別の見方をすれば、西洋が
中心になって構築してきた現代文明の黄昏の中に私たちは立っているといえる
のではないだろうか。とは言っても、目の前に広がる黄昏の風景は、現代の最
先端の科学技術によってきらびやかにライトアップされているので、多くの人
々にとって黄昏としての実感は乏しいかもしれない。

 ともあれ、このような現状を自覚したとしても、必ずしも将来を悲観したり
不安に駆られたりする必要はないと思う。なぜなら、私たちの祖先は、長い歴
史の中で幾多の危機的状況を経験しながらも、その度ごとに大きな知恵を働か
せて生き延び、次の世代、そのまた次の世代へと命をつないできたのであり、
その子孫たる私たちにも未曽有の危機を乗り越える潜在力が備わっているはず
だからだ。
                                 拓也


八千年の秋
   2015/9/29 (火) 18:48 by 北松拓也 No.20150929184816

 もうだいぶ昔のことになるが、NHKテレビで放映された大河ドラマで、俳優
の中井貴一氏が主役の武田信玄を演じたとき、武田信玄が「八千年の秋」とい
う荘子(そうじ)の言葉を口にするシーンがあった。

 毎年、暑い夏が過ぎ去り秋が巡ってくると、何とはなしにそのことを思い出
す。「八千年の秋」という途方もなく長い秋からすれば、個々の人間の命は、
実に短く儚いものだ。英語で言えば、transience of life である。

 それでは、今から八千年前の日本の秋はどうだったのだろうか。そこは縄文
時代だ。青く澄み切った秋空の下で竪穴式住居を構え、縄文土器を使用し、狩
猟採集の生活を営んでいた原日本人の風景が生き生きとそこに広がり、豊かな
山々や森の木々の間を涼やかな風が吹き抜けていただろう。

 縄文の人々の平均寿命は現代人よりもはるかに短かったはずだが、彼らは大
きな権力に縛られることもなく、互いに食料や日用品を分かち合い、素朴な心
で助け合いながら自由に大地を走り回っていたに違いない。
                                 拓也


秋彼岸が過ぎて
   2015/9/28 (月) 23:58 by 北松拓也 No.20150928235826

 秋彼岸が過ぎて、庭に生えた雑草がようやく少しずつ枯れ始めている。秋の
気配がだんだんと深まっていくのはこれからだ。しかし、今日は再び日差しが
強くなり、日中の最高気温が28度にもなったので、前日までとの気温差のため
どうも身体が疲れやすくなっている気がする。

 今夜は地球に最も接近した月、つまり「スーパームーン」が見られるとのこ
とで、テレビでは朝のニュース番組から夜のニュース番組まで、このことを報
じていた。それによれば、月の見える大きさが地球から最も離れたときと比べ
て14パーセント増し、明るさは30パーセント増しだという。しかし、私は夜空
を見ていない。テレビの画面に大きく映し出された満月を見ただけだ。

 高い気温のせいか、あるいは疲れのせいか、頭の中が少しぼんやりしている
初秋の夜には、こんな由無し言を書いて過ごすのがいいのかもしれない。

 そういえば、梅原猛『人類哲学序説』(岩波新書)に書かれていたことを思
い出す。その本によれば、普通の学者は頭が最も冴えわたっているときに読書
をするのに、哲学者の西田幾多郎の場合は、そういうときには思索をし、頭が
疲れたときに読書をしていたという。頭が疲れているとなかなか読書に身が入
らない私としては、「なんと非凡なるかな」と思わざるを得ない。
                                 拓也


読書求道記> 『アメリカの文化戦争』
   2015/9/21 (月) 00:08 by 北松拓也 No.20150921000806

『アメリカの文化戦争 ──たそがれゆく共通の夢』
(トッド・ギトリン 著、疋田三良・向井俊二 訳/解説 樋口映美、彩流社)

 この翻訳書が刊行されたのは2001年だが、英語の原書は1995年に初版が出版
されている。したがって、原書の出版からすでに20年が経過している。しかし、
この本に書かれている内容はアメリカ社会の成り立ちや根源的な社会問題など
を知るうえで、今でも非常に参考になる。

 この世界には人類共通の普遍的な理念や真理というものが存在するものと信
じている人間がいる。私もその一人だが、そういう普遍的な理念や真理を追求
してきた人間にとって、この本に書かれているアメリカ社会の実相は衝撃的な
ものと言ってよいだろう。

 ホートン・ミフリン社の歴史教科書の内容、とりわけ歴史認識を巡ってカリ
フォルニア州オークランド市で繰り広げられた火の出るような激しい論争の事
実関係から書き起こされた本書は、アメリカ合衆国という多人種・多民族・多
文化の社会が抱えている問題の根深さを、建国以来の歴史的な考察を含めて多
角的に浮き彫りにしている。

 啓蒙思想の根幹である理性に基づく普遍主義でさえも、もはや白人中心主義
の偏見として否定されるようになってしまったアメリカ社会では、人種・民族・
文化・伝統・宗教・価値観などを異にする多数のグループが自らのアイデンテ
ィティを主張してせめぎ合う分裂状態になっているという。「アメリカとは何
か」「アメリカ人とは何か」といった統一的な理念についての問いには答えら
れないというのが、1995年時点でのアメリカ合衆国の実情のようだ。

 奴隷解放運動、公民権運動、アファーマティブ・アクション(積極的差別是
正措置)、PC運動など市民の自由・平等の権利を求める激動の歴史を経験し
てきたアメリカ社会は、分厚く強靭で多種多様な言論が巨大な渦を巻き、驚く
ほどダイナミックに変化し続けている。

 ちなみに、著者のトッド・ギトリン氏は1960年代の左翼の活動家で、この本
の執筆当時は大学で社会学を教える教授であり、また家系としてはユダヤ系の
白人である。

 この本の後ろの方に記載されている解説では、著者の説明が足りない部分や、
問題の扱い方に偏りがある部分などを的確に指摘し、客観的視点から補足説明
などを加え、バランスの取れた翻訳書に仕上げている。一般的に、本の内容に
ついての称賛や、記述の手際の良さなどへの賛美に終始するような解説が多い
中で、本書のように著者の行き届かない点を率直に取り上げているのは、学究
としての真摯な姿勢が感じられる。そして、それを是とした出版社の担当編集
者も立派だと思う。
                                 拓也


梅雨明け
   2015/7/20 (月) 12:08 by 北松拓也 No.20150720120810

 関東甲信では梅雨が明けたと、昨日発表されました。そして、今日は海の日。

 雨が降れば少しは気温が下がることが期待できますが、関東南部ではこれか
ら強い日差しの下で厳しい暑さが続くことが予想されています。熱中症を予防
するために適切な水分補給などの注意が必要な日々です。

 ちなみに、和英辞典で「梅雨明け」の項目を見ると、the end of the 
rainy season と書かれていて、「梅雨が明けた」は The rainy season is 
over. と表現されています。

 では、締めくくりに一句。

   梅雨明けや 雲の白さの 増しにけり
                                 拓也


禍福はあざなえる縄の如し
   2015/7/20 (月) 00:25 by 北松拓也 No.20150720002520

 ドイツの「DIE WELT」という新聞のサイトに 7月18日付で次のような記事が
載っているのが目に留まり、「禍福はあざなえる縄の如し」という諺を思い出
しました。

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Junge Lottomillionärin ist traurig und einsam

 Durch den plötzlichen Reichtum hat sich ihr Leben dramatisch 
verändert – nicht nur zum Guten: Jane Park ist die jüngste 
Lottomillionärin Großbritanniens. Seitdem wird der Teenager 
angefeindet.

【試訳】若い宝くじ百万長者は悲しくて孤独
 突然に財を成すことで、彼女の生活は劇的に変わった。ただし、良い方向に
ばかりというわけではない。というのは、ジェーン・パークさんは、英国の最
年少宝くじ百万長者になったが、以来、この10代の少女は白い眼で見られるよ
うになってしまったのだ。
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                                 拓也


夏は絹
   2015/7/13 (月) 18:45 by 北松拓也 No.20150713184501

 「夏は絹」と言っても、かの有名な清少納言の『枕草子』の冒頭にある「春
はあけぼの……」という文句のパロディを書こうとしているわけではありませ
ん。三日連続の猛烈な暑さに辟易し、「夏は来ぬ」と今更ながらつぶやいてみ
たら、「そうか。夏は絹ごしの豆腐だ」と思い至ったというだけの話です。

 暑い夏に冷奴で食べるなら、、木綿豆腐のざらざらした食感よりも、絹豆腐
のつるんとした食べやすさが、おそらく多くの人に好まれるのではないかと思
います。が、不特定多数の人たちを対象に具体的な聞き取り調査をしたわけで
はありませんので、これは私の勝手な想像にすぎません。

 絹豆腐と木綿豆腐のように、同じ食べ物が2種類あるものとして、たとえば
「あんこ」や「焼き鳥」などがあります。それで、世の中の人々は、絹豆腐派
と木綿豆腐派、つぶあん派とこしあん派に分かれてその優劣を論じたり、また
焼き鳥にタレをかけるか塩をまぶすかといった二者択一の好みが問われたりも
します。常にそのどちらか一方にこだわる人もいれば、臨機応変、融通無碍に、
その時々の気分で選択を変える人もいます。

 ともあれ、どのようなご高説を論拠にして二つのうちのどちらを選ぶにして
も、「それぞれの人にとってそれがよければすべてよし」と、この文を結んで
おくことにしましょう。
                                 拓也


『万葉集』について
   2015/7/10 (金) 19:04 by 北松拓也 No.20150710190441

 『万葉集』といえば、30年近く前に読んだ『万葉の大和路』という美しい風
景写真入りの文庫本が清新でとても心地よく、強く印象に残っています。

 20年余り前に、私の師匠のそのまた師匠が『万葉集』の全文を英訳し、その
本が出版されたというのを聞いて、当時、東京日本橋にある書店「丸善」に行
った折に、洋書売り場でその本を見てみることにしました。すると、それは藍
色のハードカバーの分厚い本で、平台の上に置かれていたように記憶していま
すが、恐れ多くも手に取ってみたところ、確か7万円以上の値段がついていた
ので、買いそびれてしまいました。

 それから長い歳月を経て、『万葉集』の世界に心を惹かれるのを感じ、数年
前に岩波新書で出ている『英語で読む「万葉集」』という本を買い読み始めま
したが、事情があって中断することになり、その後、その本をどこに置いたの
か分からなくなりました。ただ、身辺のどこかに紛れ込んでいることは確かな
ので、その本が見つかったら、また続きを読もうと思っています。
                                 拓也


梅雨もまた過ぎ去るもの
   2015/7/10 (金) 19:04 by 北松拓也 No.20150710190401

 ある種のアンニュイを漂わせ、時にはメランコリックに降る梅雨の雨。ぽつ
ぽつと降る雨もいいが、ざぁーっと音を立てて降りしきる雨もいい。──など
と、気取った文章をたまには書いてみようかと思いながら来る日も来る日も長
雨を眺めていたところ、今日はすでに雨が上がってしまいました。これからは
しばらく晴天が続きそうです。と同時に、昨日までの過ごしやすかった気温も
終わりのようで、これからは一転して暑さの厳しい時期になりそうです。
                                 拓也


一週間は一瞬間
   2015/7/1 (水) 23:34 by 北松拓也 No.20150701233400

 とにかく早い。無常迅速。光陰矢のごとし。歳月人を待たず。あっという間
に一週間が過ぎ去りました。そして本日、7月1日になりました。これを「一瞬
間」といっても、私の時間感覚では決して誇張ではありません。とにかく、驚
き呆れるばかりの早さです。
                                 拓也


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